1.信託の設定方法
信託の設定には、以下の3つの方法があります。
(1)信託契約による方法
信託契約による方法は、委託者と受託者との間で、受託者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに受託者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(信託契約)を締結することによって信託を設定する方法です(信託法3条1号)。
信託契約は、信託を設定する方法の中で一番オーソドックスな信託の設定方法です。
信託の内容は、公序良俗違反や脱法信託等に抵触しない限り自由に決定することができます。
信託の内容を自由に決定できるということは、柔軟な対応が可能になるというメリットがある反面、不十分な内容の信託を設定してしまうと、落とし穴にはまってしまう危険性もはらんでいるということでもあります。
落とし穴にはまらないようにするためには、信託契約の条項は、適確かつわかりやすいように心掛ける必要があります。
(2)遺言による方法
遺言による方法は、受託者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに受託者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をすることによって信託を設定する方法です(信託法3条2項)。
遺言は単独行為のため、信託の効力発生後に受託者による信託の引受けが行われることになります。
遺言に受託者の指定に関する定めがあるときは、利害関係人は、受託者として指定されたものに対し、信託の引受けをするかどうかを催告することができ(信託法5条1項)、受託者の指定に関する定めがないときなどは、利害関係人の申立てにより裁判所が受託者を選任することができます(信託法6条1項)。
(3)自己信託による方法
自己信託による方法は、委託者が一定の目的に従い自己の一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録で記載又は記録することによって、信託を設定する方法です(信託法3条3号)。
自己信託は、一定の有用性が認められることから、新信託法で新たに規定されました。
自己信託は、債権者を害する行為に該当しないよう十分注意する必要があります。
2.信託の効力の発生時期
(1)信託契約
信託契約による信託は、信託契約の締結によってその効力が生じます(信託法4条1項)。
(2)遺言
遺言による信託は、遺言の効力の発生によってその効力が生じます(信託法4条2項)。
(3)自己信託
自己信託による信託は、公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電気的記録(以下「公正証書等」という。)によってされる場合は、当該公正証書等の作成によってその効力が生じます(信託法4条3項1号)。
公正証書等以外の書面又は電気的記録によってされる場合は、受益者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合は、その一人)に対する確定日付のある証書による信託がされた旨及びその内容の通知によってその効力が生じます(信託法4条3項2号)。
なお、信託契約、遺言及び自己信託の各信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力が生じることになります(信託法4条4項)。